片恋
確かに、去年伊月くんの隣で、同じイヤホンで音楽を聴いていたのは、私。

延藤くんが見たのも、きっと私。

何も知らない人から見れば、私たちは彼氏彼女に見えるんだ。


どうしよう……。

すごく嬉しい……とか、思ってしまう。


勝手に熱くなる頬を隠すために、両手で包む。

だけど延藤くんは、そんな私の様子は気にもとめていない。


「なんだ。付き合ってないんだ。よかった」


そう言って、延藤くんはニコッと笑う。


「真桜ちゃんのこと、可愛いと思ってたんだよね。誰の彼女でもないなら、俺と付き合わない?」


ギュッと手を握られて、頭が真っ白になる。


……え?
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