身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
唇を離すと、椿は耳まで赤くなってうつむいた。

まだ瞼に残るブルーのアイメイクが椿の色気を邪魔している。やはり椿は赤や桃色が似合う。

「あの……シャワーを浴びてきても? せっかく素敵な服を着るので、体を綺麗にしたいです……」

「ああ、いってくるといい。さっき汗もかいたしな」

汗をかくまでの過程を思い出したのか、椿の顔がさらに情けなく――いや、かわいらしく歪む。

ワンピースを抱いてバスルームへ走り出そうとする椿に「忘れ物」と声をかけて赤い下着を放ったら、彼女は頭から湯気が出そうなほど上気した。

――これは、まずいな。

ただ彼女を見つめていただけなのに、体がどうしようもなく昂る。つい一時間前に彼女を抱いたばかりだというのに、もう……。

椿を守るだの救うだの、偉そうなことを考えていた自分がバカみたいに思えてきた。

――これでは溺れているだけだ。

誰のためでもなく己の欲望のために椿を手に入れたい。抱きたい。貪りたい。自分以外の男に脇目を触れぬよう、閉じ込めて甘やかして絆したい。

「君を手放してやる余裕がなくなってしまった……」

仁はソファに深くもたれ、自身の欲望をならすように大きく息をついた。


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