――ちょっと、羨ましい。

椿はまだ二十一歳、専門学校の勉強も忙しく、恋人なんて作っている余裕はない――というのは本人の言い訳で、そもそも恋愛に積極的なタイプではないから、恋人ができるのは当分先になるだろう。

それでも、優しくて格好いい仁は椿の理想の男性であり、どんな人が好み?と聞かれれば真っ先に仁の顔が頭に浮かぶに違いなかった。

そのとき。突然襖が開いて、驚いた椿は硬直した。

襖の隙間から、にやにやと笑う菖蒲と、柔らかく微笑む仁が覗いている。

「椿、ずっとそこにいたでしょう。こっちからだって見えちゃうんだからね」

どうやら向こうからも椿の影が見えていたようだ。失敗したと椿は項垂れる。

「私たちがあんなことやこんなことをするとでも思ったぁ? 覗こうとしてたんでしょう? えっちぃ!」

「菖蒲。妹をいじめるのは感心しないよ。椿ちゃんはそういう子ではないだろう?」

仁がやんわりと菖蒲をたしなめる。

そういう精神的に成熟したところも椿のツボどストライクで、素敵だなあと見惚れそうになる。

椿は慌てて頭を下げて、素直に謝った。