仁と食事をともにした後、彼の家へ連れ帰られ体を重ねる――そんなやり取りを幾度か繰り返した。

いつだって仁は頼もしく椿をリードし、丁寧に抱いてくれた。

夜のお相手が下手な椿に、仁は手取り足取り教えてくれる。

なにより、彼の体を知り素肌に触れられることが椿は嬉しかった。

そこはかとなく湧き上がる、大切にされているという実感。

自分は姉の身代わりなどではなく本物の恋人である、そう錯覚してしまいそうなほどに。

――仁さんは少しずつ私に心を開いてくれているのかもしれない……。

自惚れかもしれないが、そうであると願いたかった。

やはり仁は憧れていたままの、優しくて誠実な人――そんな期待が膨らんでくる。

椿の心にはもう、結婚を拒む気持ちなど欠片もなかった。



二カ月が経ち、季節は六月。

着物の世界でも衣替えのシーズンで、これまで着ていた(あわせ)から裏地のない単衣(ひとえ)へと切り替える時期だ。

風通しのよくなった着物で出勤した椿は、夕方、早めに店を上がらせてもらい婦人科に向かった。

先日、ブライダルチェックを受けたのだ。妊娠可能な体であることを証明したかった。