【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
 次の日。明るい場所で目にするアスカリッドの王都は、プーランジェとはまた違う雰囲気に包まれていた。
 アスカリッドはよく言うと素朴な感じ、悪く言えば田舎くさい。プーランジェの王都は近代的な感じはするが、とても冷たい感じがする。きっと建物の違いがあるのだろう。アスカリッドでは木造の建物が主流らしい。

 宿からは馬車で学院へと向かう。こちらの学院も新学期が始まるまでの長期休暇中。正門脇の小屋にいた守衛に、アイリーンは声をかけた。彼女がアスカリッドの言葉で尋ねたから、守衛は驚きつつも丁寧に学長室の場所を教えてくれた。見取り図まで手渡してくれた。
 この守衛も、今日、プーランジェからの学生が来ることは知っていた。この学院に編入しようとするプーランジェのお嬢様と聞いていた。
 だから、どれほど高慢ちきなお嬢様なのだろう。ここに来たのもお嬢様の気まぐれか、プーランジェにいられなくなったから来るのか、そのどちらかだろう。そもそもこのアスカリッドの言葉なんかも満足に喋ることができないだろう。とそんな風に思っていた。
 まだ根強く残るプーランジェへの負の感情。
 だがその守衛は、アイリーンの第一声を聞いてそんなことを考えていたことを心から反省したのである。彼女の態度からは、高貴でありながらも謙虚、そんな印象を受けた。だから守衛も快く教えただけ。

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