【コミカライズ】腐女子令嬢は隣国の王子から逃げられない~私は推しカプで萌えたいだけなのです~
「ジョア、彼女は何者だ」とイブライムは他には聞こえないように、ジョアキナに尋ねた。
「通訳のようですね」とジョアキナは答える。
 このようなアスカリッドとプーランジェの者たちが集まっての会議、と呼ばれるようなものはなかなか行われない。基本的には書面でのやり取りのみ。
 しかし、プーランジェの宰相がアスカリッドに行く予定がある、ということで向こうの国王から打診があった。それをこちら側で承諾した形だ。言葉が通じない中、どんなやり取りが行われるのかと思っていたが、どうやら向こうは通訳を連れてきたらしい。

「あの大臣たちにも物怖じせずに意見を言っている」
「彼女は通訳ですから、その言葉の出どこはあちらの宰相様でしょう。それを代弁しているだけかと思いますが」

 イブライムにはなんとなく彼女が輝いて見えた。後光が差している。
 時折見せる笑顔が、この場を和ませていることに、彼女自身は気付いているのだろうか。

「でも、あれだけの内容を通訳しているのは、なかなかですね」
 ジョアキナの関心は別なところ。彼女の力量。

 だが、イブライムは彼女から目が離せなかった。彼女は書面に目を通しては、隣の宰相に重要な文章を指して、説明をしている。必要なサインの箇所についても指示をしている。ときおり、二人の間で聞き慣れない言葉が飛び出すのはプーランジェの言葉で話をしているのだろう。
 ただの宰相と通訳、その関係であるだろうに、彼女の隣にいる宰相がちょっとうらやましいと感じた。その笑顔を自分にも向けてくれないだろうか、と。
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