消えた未来
 お姉ちゃんは懐かしそうに、辺りを見渡しながら歩いている。

 私はというと、繋がれたままの手のほうに意識が集中していた。

 お姉ちゃんと手を繋いで歩くなんて、いつぶりだろう。

 さすがに高校生にもなって、お姉ちゃんと手を繋いでいるのは恥ずかしくてしょうがないけど、嬉しさのほうが勝っているような気がした。

「ねえ真央、この辺でおすすめのお店ってある?」

 お姉ちゃんは本当に楽しそうに振り返った。

 私よりも子供のようで、微笑ましく思えてしまう。

 だけど、私がやろうとしていることは、その楽しい空気を壊すことだった。

「……私、寄り道したことないから、わからない」

 予想通り、お姉ちゃんの表情が曇る。

 いたたまれなくて、とりあえずお姉ちゃんの手から逃げようとしたけど、それよりも先に、さらに手を引かれてしまった。

 顔を上げると、お姉ちゃんは笑顔に戻っている。

「じゃあ、私のお気に入りの喫茶店に行こう」

 私の意見も聞かないで、お姉ちゃんはどんどん進んでいく。

 ここまで楽しそうにされてしまうと、暗い気持ちでいるのがバカらしく思えてくる。

 途中から知らない道に入って、喫茶店に着いた。

 中に入ると、オレンジ調の暖かいライトに包まれた。
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