消えた未来
「真央に?」

 お母さんとお父さんの視線が、私に向く。

 怒られるような気がして、目が合わせられない。

「真央は前のお父さんとお母さんに戻ってほしいんだよ」

 それを言われると思っていなかったから、勢いよくお姉ちゃんのほうを見た。

 私の視線に気付いたお姉ちゃんは、私の反応に対して不思議に思ったらしく、首を傾げた。

 目が、事実でしょ?と言っているようで、なにも反論できなかった。

 そしてすぐに、お父さんたちのほうを向いた。

「私も真央も、子供じゃない。言ってくれればわかるのに、どうしてなにも言わずに、変わっちゃったの」

 お姉ちゃんははっきりとした物言いで、一番伝えたかったことを言った。

 横から見ても、その視線は力強い。

「私だけに厳しかったなら、我慢した。親離れしないとって、自分でも思ったし。でも、真央を育てたいからって、真央から青春を奪うのは、違うと思う」

 お姉ちゃんが言っている途中、お父さんたちを見た。

 二人とも、視線を落として落ち込んでいるように見える。

 先に顔を上げたのは、お母さんだった。

 見るからに泣きそうな表情に、私まで胸が苦しくなる。

「なにを言っても信じてもらえないかもしれないけど……貴方たち二人を苦しめたかったわけじゃないの」
< 57 / 165 >

この作品をシェア

pagetop