消えた未来
「心を鬼にして接しておかないと、前のように甘やかしてしまうと思った。完全に、俺たちの都合で二人には嫌な思いをさせてしまった。すまない」

 続いて、お父さんが言った。

 お姉ちゃんが言っていたのは、あながち間違っていなかったみたいだ。

 あの話を聞いていたからこそ、今のお母さんたちの言葉を簡単に受け止めることができた。

「ごめんね、奈穂。真央」

 お母さんはお姉ちゃんと私の目を見て言った。

 私は首を横に振る。

「厳しくしたって、お互いにいい気しないんだから、今まで通りにしなよ。真央は今までと違って、進んで家事を手伝わないといけないけど」

 お姉ちゃんは意地悪そうな目をして言ってきた。

 それが面白くなくて、私は頬を膨らませる。

「わかってるもん」
「本当かなあ」

 それが冗談なのは、言い方と表情でわかった。

 だからそこまでムカつかなかったけど、そうする理由がわからない。

「なに言ってるの。奈穂より、真央のほうがしっかりしてるわ」

 お母さんがそう言って、ようやく理解した。

 お姉ちゃんは、わざとこの空気を作ったんだ。

 お母さんのコメントに不服そうだけど。

 でも私は、久しぶりにお母さんの優しい微笑みが見れて、嬉しかった。
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