合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

呪縛(三)

「僕と君とはとてもよく似ているからね。その答えで十分さ。でも、だからこそ、僕は君を選ばなかった。僕にとっては、似ているではダメなんだ。同じもの同士は、いくら掛け合わせても同じでしかない? 君といると落ち着いて心地良いけど、それでは何も変われないからね」

「変わる……」

「今度の王家主催の夜会で、上には婚約を報告するつもりだ。その時にソフィアに会わせたい人がいる。あまり行きたくないだろうが、考えて欲しい。僕が今言ったことも含めてね。良い返事を待っているよ」

 グレンは私の返事を待たず、手を振りながら部屋から出て行った。

「また勝手なことを言って」

 思わす手近にあった枕を、グレンの出て行った扉に目がけて投げつける。

 軽い枕は扉にあたることなく、床へと落ちた。

 変わる。その言葉が突き刺さる。

 確かに私とグレンはとても似ている。

 物静かで、誰とも群れず、一人で黙々と進めていくタイプだ。人に頼るのも、人から愛させるのも苦手で。

 そうか、ソフィアは瑞葉そのものなんだ。

 私は瑞葉からソフィアになって、記憶を取り戻すまでの今まで、瑞葉という人間と何か違うとこはあっただろうか。

 別の人として生まれ変わったはずなのに、気づかぬうちにまた同じような人生を繰り返していた。

 まるで逃げられない呪縛のように。

 せっかく生まれ変われたというのに、私は何をしてるんだろう。

 父と母の顔色を窺い、妹を避けながら当たり障りのない姉を演じる。そんな人生なんて。

「これじゃ、瑞葉の時と全然変わってないじゃない。もう一度同じことを繰り返すの?」

 変わらなきゃ。ううん……変わりたい。

 グレンがせっかく作ってくれたきっかけだもの、今度こそソフィアとして何もかもやり直そう。

 握った手に力を入れた。そのためにやれなければいけないことは分かっているから。
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