合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

婚約(八)


「君みたいに美しく、そして聡明な人は今までに会ったことがない」

 興奮するあまり、キースに手を握られていることをすっかり忘れていた。

「あのですね、まだお会いしたのは二度ほどしかないではないですか」

「時間の問題ではないんだよ。君となら、良きパートナーとなれるはずだ。もしそんなに時間が気になるなら、毎日でも口説きに行くよ」

 鏡を見なくても、自分の顔が赤くなっているのが分かる。

 つい最近、親友と呼べる人が出来たばかりだというのに、婚約者もだなんて。

 何がなんだか、ついていけない。

「急にあれこれ言われては、ソフィアも混乱していますよ、キース」

「ああそうだな。だが、前向きに検討して欲しい。俺は本気だ。侯爵にも近々挨拶へ伺いさせてもらうよ」

 苦手なタイプの人間だったはずなのに、急に、それもこんなに真剣に言われると断りづらい。

 そして何より、この瞳を見ていたいなと、ほんの少しだけ思う自分がいることに自分が一番驚いた。

 そう。こんな感情は生まれてから初めてかも、しれない。
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