オトメは温和に愛されたい
 とある総合病院で雇われ小児科医をやっているカナ(にい)は、大病院勤務なだけにそれなりに大変なのかもしれない。
 あと数年そこで研鑽(けんさん)を積んだら、ゆくゆくはお父さんが開院している小児科を継ぐ予定みたいだけど、今はまだ。

 でも本当……一言ぐらい何か言ってからいなくなっても良いのに。
 いつもいつもマイペースなんだから。

 
***


 結局鳥飼(とりかい)家、霧島(きりしま)家合同でのお祝いパーティーは、お昼過ぎからつい今し方20時過ぎまであって。

 いい加減明日もみんな仕事だし……ということで無理矢理お開きにしたけれど、あれ、明日も休みだったらきっと夜通しコースだった気がする。

 うちの両親も、温和(はるまさ)の両親も、一度タガが外れると本当振り切ってしまうところがある。
 お隣同士であんなに仲良しなのはある意味素敵なことだし、考えてみると親戚になるわけだから親同士が元々懇意なのは有難いことなのかもしれない。

「みんな、すっごい弾けっぷりだったね」

 温和(はるまさ)の方を見つめて淡く微笑んだら、「そうだな」って頬に手を添えられた。

「俺としてはさっさとお(いとま)してお前と2人きりになりたかったんだけどな」
 チュッと唇を掠めるようなキスをくれる温和(はるまさ)に、にわかに頬が熱くなる。
「あんなに喜んでもらったらさすがにそれもしづらいよな」

 私の唇を意味深に指の腹でなぞる温和(はるまさ)に、
「はっ、温和(はるまさ)さんっ、私としては連日連夜のようにこういうのもちょっと……」

 真っ赤になりながらソワソワとそう言ったら、「こういうのってなに? 唇に触れただけでいやらしいこと想像したの?」ってクスクス笑うの。
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