オトメは温和に愛されたい
 温和(はるまさ)はうちのお父さんとお母さんの反応にホッとしたように肩の力を抜くと、今度は自分のご両親の方を向いた。

「そういうことなんで……宜しくお願いします」
 って、ちょっと待って……温和(はるまさ)
 それは余りにぞんざいだって!

 温和(はるまさ)の雑すぎる挨拶に戸惑って、私は慌てて言葉をつむぐ。

「わ、私なんかじゃ温和(はるまさ)さんに釣り合わないかもしれないですが、どうか大好きな彼のお嫁さんにならせてくださいっ」

 うー。
 温和(はるまさ)の、うちの両親へのしっかりした挨拶と比べてグダグダすぎるよぉー。

 でも、でも……。

 ギュッと目をつぶって頭を下げたら、「大歓迎よ!」っておばちゃんが言ってくれて。
温和(はるまさ)にはもったいないくらいだよ」
 って、おじちゃんも言ってくれたの。


***


「疲れたぁー」

 車に乗り込むなりシートに埋もれてそうつぶやいた私に、温和(はるまさ)が苦笑する。

奏芽(かなめ)のやつ、気がついたら逃げてるし、やられたよな」

 さすがカナ(にい)と言うべきか。
 私たちがモタモタしている間に、ちゃっかり居なくなっていて……お母さんに聞いたら「お兄ちゃん、明日早いって言ってたから」ってあっけらかんと返された。
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