オトメは温和に愛されたい
 お互い、冷蔵庫や洗濯機が一人暮らし仕様で小さめだけど、家を建てるまではそれで(しの)ごうと言うことになっています。

 2人の家電を見比べて、状態がいい方を残す形で余った方はリサイクルショップへ。

 家計は結局私が管理することになって、リサイクルで得られた微々たる収入は、ちゃんと貯金しておきました。

 温和(はるまさ)は「それで旨いもんを食いにいくのもありだぞ?」って言ってくれたけれど、新婚旅行で思いのほか散財してしまったし、やめておこう?って言ったの。

 それに、家を建てるとなったらかなりの出費だし、ね?

 ゆくゆくは子供だって欲しいし、そうしたら私、今みたいに働けなくなると思うから。

 そう付け加えたら、「音芽(おとめ)は本当、しっかりしてるな」って頭を撫でられた。

 温和(はるまさ)だって何も考えていないはずはないのだけれど、私と一緒にいるとどうも財布の紐が緩みがちなので困っています。

 ほら、防音室の一件にしても、でしょ?

 ね、温和(はるまさ)。結婚式での誓い、ちゃんと覚えてる?

 とは言え、新婚旅行のときクラゲ水槽のオブジェは買ってもらえなかったので、温和(はるまさ)なりのガイドラインみたいなものはあるのかも知れない。

 こういうことを言うと、めちゃくちゃ倹約しているように思われるかも知れないけれど、私、別に温和(はるまさ)に窮屈な思いや恥ずかしい思いをさせたいわけじゃないの。

 結婚した途端、大好きな温和(はるまさ)が、「霧島(きりしま)は人付き合いが悪くなった」とか言われるのは絶対に嫌だし、そのための交際費はケチりたくないから。

 だから締められるところは締めて、使うべきところではパッと潔くお金を払いたい。

 そんな感じ、かな。
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