オトメは温和に愛されたい
 あ。そう! アパートといえば私たち、婚姻後も未だに同じアパートに住み続けたままで。

 私は私の部屋をまだ解約できていないし、温和(はるまさ)にしてもそう。

 温和(はるまさ)は結婚前から実家の近くに土地を買って、マイホームを建てようって言っていて、先日やっと土地の契約を取り付けたところです。
 今はとある建築設計事務所と、家の設計図などを煮詰めているところ。

 温和(はるまさ)ってば、私のためにピアノを置ける小さな防音室を完備してくれるみたい。
 私が「電子ピアノでいいし、防音室は要らないよ?」って言ったら、「子供に教えたりしたくねぇの?」って聞かれて、言葉に詰まった。
 確かに我が子ができたら教えてみたいけど……でも防音室とか……作るの高いし贅沢だよ?
 温和(はるまさ)に再度そう訴えたら、「そこはお前と結婚したら譲りたくねぇって思った俺のこだわりなんだよ」と一蹴されてしまった。

 そして、なぜか「寝室と子供部屋想定の部屋との間に、防音室を挟むようにしたい」とか謎のこだわりを設計士さんに言い出して。
 意味が分からなくて「何で!?」って聞いたら、ニヤリと笑って、「そのうち俺の英断に感謝するときが来るさ」って……。何それ?

 そんなこんなで妙なこだわりを盛り込んだマイホームが建つまで、あと数ヶ月はかかりそう、かな?

 とりあえずそれまではってことで、荷物が少ない温和(はるまさ)が、私の部屋に越して来る算段で動いている真っ最中です――。
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