オトメは温和に愛されたい
 温和(はるまさ)を追いかけてなってみた先生というお仕事は、私にとって今や掛け替えのないものになっている。

 担任を受け持つのは大変なことだけれど、それゆえに得られる喜びも大きくて。

 それを手放さないと……ダメ、なの?

 担任を受け持ったまま産休に入られた先生がいらっしゃらないわけではないし、むしろそっちの方が主流だと思う。
 だから私も、そう言う成り行きに任せた流れの中で、子供ができたら策を講じる、でいいのかな?って漠然と思っていたの。

 担任が産休に入った間は、臨時の先生がいらして、ちゃんと子供達のことは大丈夫なように引き継いで下さるし。

 何より。
 鶴見(つるみ)先生の時のような、それこそ突発的な怪我や、はたまたいつ降りかかってくるか分からない病気なんかと違って、妊娠は産休に入るまでに数ヶ月間の猶予(ゆうよ)がある。

 学校側も後任の先生をじっくり選ぶことが出来るから、多分そんなに神経質になる必要はないんじゃないかと思っていたの。

 そう思っていたから温和(はるまさ)の言葉はまさに寝耳に水で。

「そん時になってみないと分かんねぇけど、つわりとか酷くないって保証だってねぇじゃん? お前こんなにちっこくて線が細いくせに変なところで強情で頑張り屋だろ?」

 そこでギュッと抱きしめられて、耳元で囁くように続けられる。
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