逆プロポーズした恋の顛末
再会は、思いがけずおとずれる

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今日もまた、すさまじく忙しい朝のひと時を乗り越え、幸生がボタンをかけちがえた上着を直し、散らかり切った部屋の惨状を諦めれば、もう保育園へ行く時間だ。


「行くよ、幸生!」

「行くー! あ、ママ、ちょうちょだ。えいごは?」

「butterfly」

「あのお花は?」

「あれはわすれな草で……ええと、forget-me-not!」


アパートを出た瞬間から、幸生は見かけるものを指さし、「英語では、何と言うのか?」と繰り返し問いかけてくる。

さびついた英語力でもそれなりに答えられるが、時々思い出すのに時間がかかり、歩みは遅々として進まない。


(できれば今日はいつもより早く出勤したかったのに……この調子だと、またしても遅刻ギリギリになりそう)


今日から、所長の代理を務めることになっている「イケメン」「独身」の医師がやって来る。

清潔第一、日々の清掃は怠っていないが、いかんせん診療所の建物自体が古いので、見栄えがよろしくない。
どれほど掃除したところで新築同様の美しさにはならないが、隅々までキレイにしておきたかったのだけれど……諦めるしかなさそうだ。


「あ、アリさんだ! きょうは何を運んでいるのかなぁー?」

(え……いやぁぁっ!)


道を横切るアリたちが、結構な大物を運んでいるのを見てゾワっとした。


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