今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

キミだけだから。


屋上からの帰り、ゆっくりと廊下を歩いていると……。

なんだが、誰かが猛スピードで駆けてきてる音がした。


ドンッ!


「きゃっ……!?」


次の瞬間、曲がり角から走って出てきた男の子とぶつかってしまった。


「っ……大丈夫?」


腰に手を回されて、抱きしめられるような形で支えてもらった。


「あっ……しゅ、しゅいませんっ……」

「いや、俺がちゃんと前みてなかったよ。……って、キミ、天使さま……?」

「へっ……!?ち、ちがいますっ……!!」

「……へぇ〜」

「へっ!?」


私の頬に手を触れさせた男の子は、そのまま
私との顔の距離を近づけた。


「な、なんなんですかっ……!?」

「ん〜?本当に天使みたいな顔してんなって。……久しぶりなのに」

「ど、どういうことですかっ!?は、はなしてください!!」


嫌だ嫌だっ……!!

そ、それにボソッとなにか言わなかったこの人……?あと、なんだか見たようなことがあるような……。


「ふふっ、可愛い可愛い。怯えてるのかな?」

「や、やめてっ……!!」

「ちょっとなにやってんのよクソガキ!!!」

「やっべ女神きた。じゃあまたね。天使さま」


跪いて私の手の甲にキスを落とした謎の男の子。


「陽奈ちゃんっ……!」

「大丈夫!?」


陽奈ちゃんは私のことをぎゅっと優しく抱きしめてくれた。


「う、うんっ……ありがとう……」

「いいえ。ッチアイツ、ぶっ殺すわあとで」

「えっ……!?だ、だめだよっ……!」


みんな悪口いいすぎっ……!!


「ふふっ、冗談。ほら、教室戻るわよ」

「うんっ……!!」


それから私は教室に戻りながら陽奈ちゃんにいまあったことを話す。


「えっ?それって、間接キスしまくったってことよね?」

「たまたま橋が1セットしかなかっただけだよ!」

「でも、したってことは変わらないわよ」

「そ、そっか……」


で、でも……!久遠くんとだったから、嬉しい、なっ……!
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