今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

「……それで……アイツに、変なことされなかった?」

「アイツって、さっきの人のこと……?」

「ええ」


変なことっていうか……。


「ちょっとぎゅって、されたかな……」

「そう……いい?アイツが噂の理人よ」

「えっ……!?」


あの人がっ……!?あの、理人、さんっ……!?


「そ、そうだったんだっ……」


た、たしかにすごくかっこいい人、だと思うけど……。


「はぁっ……本っ当危ない。気をつけなさいね」

「う、うん!」

「っていうか、理人とは関わっちゃだめよ」

「わ、わかったっ……!」


コクコクと勢いよく何度も私は頷いた。


「……とは言っても、まずいわね」

「?、どういうこと……?」


まずいって……?


「目つけられたっぽいし、これか———」

「なんでそんなに詳しいの?」


さっきから陽奈ちゃんの話を聞いていると、とても理人さんのことについて詳しいように見える。

「え?ああ、それわね」

「うん?」

「あたしたち、幼なじみなのよ」

「へ!?」


お、幼なじみ!?

そ、そうだったんだっ……!


「ちなみに、颯も幼なじみよ」

「へぇっ……!そうだったんだっ……!」

「小さい頃はよく遊んでたんだけど……どんどんアイツ(理人)の素性知ってちゃってね」

「そ、そっか……」


私と陽奈ちゃんと颯くんは幼なじみだけど、理人くんとふたりが関わりがあったなんて……。


「……だから、明日から、っていうか、もういまから、久遠かアタシといるのよ?」

「りょ、了解ですっ……!!!」
< 29 / 257 >

この作品をシェア

pagetop