政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
2.桜の思い出
「本日から、よろしくお願いいたします」

 浅緋は片倉のマンションに引っ越しをした。
 と言っても、片倉が引っ越し屋の手配なども全て済ませてくれて、迎えにきてくれたので、浅緋がすることはほとんどなかったのだが。

 あの雪の日以降、片倉とはその後数回顔を合わせた。

 父が保有している会社はいくつもあるけれど、そのほとんどを片倉が代表を務めているベンチャーキャピタルで今後面倒を見ることになっている、と顧問弁護士から後で聞いた。

 社名は変わらないけれど、会社経営のノウハウを持った人物が配置され、会社を経営してゆくのだそうだ。

 母も浅緋も経営については全くの素人なので、父がそう決めていたのであれば、きっとそれがベストなのだろうと思っている。

 その他の相続に関しても、顧問弁護士や顧問税理士からのアドバイスと遺言に従って粛々と進められた。

 片倉と顔を合わせたのは、会社の件で委任状が必要だと母と浅緋の実印を取りにきた時と、その時に『今度、お食事にお誘いしてもいいですか?』と聞かれ、食事に行くことになった時だ。
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