政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 そう言えば、園村は浅緋には交際の経験はない、と言っていた。
 だったらきっとベッドのことなんて、考えていなかったんだろうなあと片倉は思う。

「あの……私……」
 真っ赤になった浅緋がうつむいてしまった。

 片倉の視線からはそのほんのりと色づいてしまった耳が見える。

 浅緋は自分の顔を一生懸命抑えていたけれど、片倉は可愛らしい浅緋の耳を咥えて味わったら、どんな風になるんだろうと考え、無理はいけないと自分を抑える。

「冗談ですよ。無理しなくていいんです」
「すみません」

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