名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
労多くして功少なし
「夏希ちゃん、準備出来ている?」

 紗月の声が玄関から聞こえてきた。

「準備出来ているよ。そこに置いてあるし」

 乳幼児を連れての2泊3日の旅。車だからオムツパックを丸ごと詰んで、着替えも汚しても大丈夫なように多めに将嗣の田舎は東北だから上に羽織る物とか考えていたら結構な量になってしまった。

 その山盛りの荷物を見て紗月は特大なため息を吐いた。

「もう、バカなの? イマドキの田舎はチェーン店が進出しているんだからなんでも買えるんだよ。荷物を少し減らしなよ」

「子供の事を考えると買いに行く時間も考えちゃうの。大目にみて!」

 そう、子供が服を濡らしたら直ぐに着替えさせないと風邪を引くとか、皮膚が炎症を起こすとか、そんなの取り越し苦労だとは思いながらもつい荷物が増えてしまった。

「もうすぐ、約束の時間だし入れ直す時間もないか、しょうがないなぁ」

「そうそう、親バカだからしょうがないの」

「美優ちゃんは愛されているなぁ」
 
 美優のオムツを取り換えて準備も万端。
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