すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
片想いの人
「……きわ、む……さん、――私」

 真剣なそのさん――(きわむ)さん?――の眼鏡越しの視線に()されて、中途半端なままには出来ないって思って。

 正直に、「私には好きな人が……」って告白(ごめんなさい)しようとした、ちょうどその時――。

 
「そのさん、お取り込み中のトコ大変申し訳ないんですけど……田中先輩が呼んでます」


 突然声をかけられて、身体がビクッと跳ねた。

 (きわむ)さんの陰になっていて声の主の姿は見えないけれど、私には大好きな柳川(やながわ)の声だってすぐに分かった。



「おー、柳川。わざわざ(わり)ぃな」

 柳川の登場に、(きわむ)さんが私を抱く腕をほどいてくれて。

 でも、いま(きわむ)さんが私の前から居なくなってしまったら、先輩(かれ)に抱きしめられていたのが私だって柳川にバレてしまう!

 ――そんなの、嫌!

 そう思ったら、立ち去ろうとする(きわむ)さんの白衣を、咄嗟にギュッと掴んでしまっていて。


言凛(ことり)……ちゃん?」
 どこか嬉しそうに私の名前を呼ぶ(きわむ)さんの背後から、

(なる)(みや)、お前……」

 柳川の、どこか冷ややかにさえ聞こえる静かな声音が響いた。
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