婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

 清々しい、朝だった。
 空は晴れ渡っていて、これなら洗濯物もよく乾きそうだ。
 だから今日はまず洗濯をして、それから細々とした雑用を片付けてしまおう。
 新米修道女であるサーラは、朝からそんな計画を立てていたのだ。
 それなのに。
「すまなかった」
 招かれざる客は、男子禁制の修道院において最もふさわしくない若い男性だ。彼はサーラに会うなり謝罪すると、勢いよく頭を下げた。
(ええと……)
 サーラは困惑して、目の前にいるその男性を見つめる。
 彼は、リナン王国の王太子カーティス。
 つい最近までサーラの婚約者だった男性だ。
 サーラは目の前で頭を下げたまま動かない、かつての婚約者を見つめる。
 いくら婚約者だったとはいえただの貴族の娘に、王太子が頭を下げて謝罪してもいいのだろうか。
 そう思ったが、言葉にして諫めるほど彼に対する思い入れはなくなっていた。
 それほどのことを、彼にはされている。
(今さら、何をしにいらしたのかしら……)
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