天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 あんな思い、もうしたくない。

 だけど、二度とパイロットと付き合わないと決めた理由はほかにある。

 あのときの自分の失態を思い出し、指先が冷たくなった。

「パリでも言ったと思いますけど、私はパイロットとだけは付き合うつもりはないので、あきらめてください」

 翔さんを見上げ、はっきりとそう言う。

「里帆の、そういう臆病で不器用なところも好きだよ」

 私が頑なな態度をとっても、翔さんは少しも動じなかった。

「……でも、君との恋を一夜だけの思い出で終わらせるつもりはない。これからとことん里帆を口説くから、覚悟してくれ」

 挑戦的に微笑まれ、心臓がドキドキと音をたてる。
 どうしていいのかわからなくて、私は途方にくれてしまった。




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