エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
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「それでは、かんぱーい!」
掛け声に続いてグラスを合わせる音がする。洋風のどこかの城のような豪華な部屋に、華やかに飾られた花々。そして、目の前に運ばれてくるフランス料理。
「それでは、新郎新婦の簡単なプロフィールをご紹介させていただきます」
マイク越しでも麗しい声で女性の司会者が言う。
ネイビーのAラインドレスに身を包んだ私は、ひっそりと静かに乾杯のシャンパングラスに口をつけて飲むフリをしていた
今日は中学校からの友人、萌の結婚式だ。今日の彼女は白いウェディングドレスを身に纏い、晴れやかな笑顔で座っている。とても美しい。お世辞なく女神のようだ。
友人席の丸いテーブルからそれを眺めていると、高校の同級生たちが料理を口に運びながら話し始める。
「ついに萌も結婚とはね」
「本当に。ちょっと前まで結婚なんてしないとか言ってたのに。三十になる前に駆け込んだわね」
「でも、結婚したら自由ないから。私は独身に戻りたいわ」
と口々に言う彼女たちの薬指にはプラチナの指輪がきっちりと嵌っている。
「ねぇ、柚瑠は?付き合ってる人いないの?」
「え?い、いないよ」
ボーッとしていたら、急に話を振られて吃ってしまった。それも彼女たちは大して気にせず、運ばれてきたパンを早々に千切って食む。
「そうなの?綺麗なのに。選り好みしてんでしょ」
「選り好みというか、仕事に追われてて」
「仕事って、大手商社の事務だっけ?すごいよねぇ」
「そんなことないよ。雑用ばかりで」
「そうなんだ?じゃあいい男見つけて、稼いでもらったらいいじゃん。旦那の友達にいいのいたら、紹介してあげようか?」
「え、あ、いや、その」
「あ、今写真取れそう。萌のところ行かない?」
新郎新婦の周囲の人垣がいなくなっていて、同級生たちがぞろぞろと椅子から立ち上がる。話の流れが切れたことにほっとした。あのままだと、既婚貴族たちの恰好のネタになっていたところだ。
私もスマホを手に彼女たちの後に続いて新婦の萌に近づいた。
「萌、おめでとう」
「ありがとう、柚瑠」
私が話しかけると、ほどよくライトが当たった萌はにっこりと微笑んだ。
私の人生一番の親友。小学校から高校まで一緒だった。大学からは別々になったけど、定期的に遊んでいた。大人になってからは時間がなくて会えない時が多くなったものの、その分メッセージではやりとりしていたから全然会っていない感覚がない。もう空気みたいな、姉妹に近い感じ。その彼女が結婚すると聞いた時は自分のことのように嬉しかった。
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