同居人は無口でクールな彼
ちらりと篠原くんの様子を見ると、表情を変えずに黙々と朝ごはんに手を付けていた。
確かにここにいるのは、みんな篠原さんだけど……
篠原くんのことをいきなり名前で呼ぶのは、ハードルが高すぎる。
「大丈夫、鈴香ちゃん。翔哉は照れてるだけだから」
「そうそう。女子に名前を呼ばれるなんてことないだろうしね」
ご両親から言われるがままの篠原くんは、無言を貫いている。
でも、どこかイラついている雰囲気があって……
やっぱり名前で呼ぶのは控えておこうと、ひそかに思った。
「あら、翔哉ったら、お弁当忘れて行ってるわ」
一足先に家を出た篠原くんを追いかけるように、わたしも登校をしたときだった。
おばさんの困ったような声が聞こえてきたのは。
「おばさん?」
「あら、鈴香ちゃん。あ、そうだわ。鈴香ちゃん、お願いしてもいい?」