同居人は無口でクールな彼
おばさんがニコニコと、篠原くんの大きなお弁当箱が入った包みを持ってやって来る。
その笑顔を見ると、やっぱり断れなくて……
「わかりました。篠原くんに渡しておきます」
「ありがとう、鈴香ちゃん。助かるわ。あの子ったら、本当どうしようもないんだから」
渋々受け取ったお弁当の包みからは、予想以上にずっしりと重みを感じた。
ただこのお弁当を彼に渡すだけ。
わたしの今日の最大のミッションは、それだけ。
そうやって簡単に済ませようとしたのだけれど、いざ教室に入ってみると、それは決して簡単ではなかった。
「ねえ、昨日のドラマ見た?」
「見た見た!主演のリョウくんかっこいいよね」
「うんうん!あー、うちのクラスにリョウくんみたいなかっこいい男子いたらなあ」
クラスメイトの他愛もない会話が耳に入ってくる。
そんな中、窓際の1番後ろの席に座る篠原くんの姿をとらえた。