私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜

epilogue( side neige)

「初夜に酔い潰れる弟もまた一興だね」

 やたらと飲まされていた酒に弱い弟は、もう今は夢の中だろう。ネージュは自分が先に涼みに来ていたテラスに、酒の瓶片手に現れた兄のニクスに言った。

「……スノウに先を越されたな」

 ニクスはくるくると表情の変わる良く似た弟のスノウとは違って、無表情が標準だ。なぜかと言うと、次期辺境伯となる者が明け透けに感情を出してはならぬと幼い頃に教師に言われて、ずっとその通りにしているからだ。要するに、冗談の通じないクソ真面目な兄なのだ。

「……不思議はないんじゃない。僕らの中で幼い頃から一番あいつがモテたからね」

 寡黙で何を考えているかわからない長男やいかにも扱いが面倒くさそうな次男に比べ、感情表現豊かで甘え上手は三男は女の子たちによく好かれた。なので、一番最初に結婚してもおかしくはあるまい。

「俺なりにはアナベルを大事にしているつもりだったが」

 柵に手を当てて夜空を見上げて呟くように言ったニクスに、あの底抜けにバカな女のことをまだ気にかけていたのかとネージュはため息をついた。

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