旦那様は征服者~慎神編~
奏瑪、噛みつく
「何処に行くんですか?
ほんとに、逃げることできるんですか?」

「全て、準備してます。
いつか……こんな日が来ることを信じて、少しずつ準備してたんです」
車に乗り込み、莉杏が心配そうに言う。
そんな莉杏に、奏瑪はバックミラー越しに微笑んだ。

「とりあえず、今日は車内で夜を明かすことになります。すみません!」

「いえ……
奏瑪さん、ほんとに大丈夫ですか?
慎神くんに逆らうようなこと……」

「大丈夫………ではないです…」
少し、奏瑪の表情がかげる。

「ですよね?」
「でも…!」
「え?」

「覚悟をして、ここにいます」

「はい。私も、覚悟はできてます!」

小さな休憩を入れながら食事をし、9時間程車を走らせ………


「莉杏様、今日はここに停めて休みましょう!」
「はい」
パーキングに停め、奏瑪が運転席降りた。
トランクから、毛布を持ってきて後部座席に乗り込んだ。

「寒いので、ちゃんと羽織っててくださいね!」
そう言って、毛布を莉杏にかけた。
そして莉杏の頭を、ポンポンと撫でた。

「え……奏瑪さんは?」
「僕は、大丈夫です!」
「え!?ダメですよ!」
そう言うと、奏瑪にぴったりくっついた莉杏。
毛布を半分、奏瑪にかけた。

「莉杏…様…////?」
「こうやって、くっついて寝れば温かいです!
本当は、抱き締め合った方が温かいんでしょうけど、さすがに…/////」
顔を赤くして俯く、莉杏。

奏瑪は、とても幸せな気持ちに浸っていた。
ただ……くっついて寄り添うだけで、こんなに心が温かくなるものなのか……

目頭が熱くなる━━━━━

奏瑪は莉杏を、横から抱き締めた。
「え……奏瑪さん?」
「抱き締め合った方が、温かいから……」
「はい…」
莉杏もゆっくり、奏瑪の胸に頭を預けた。

静かな、穏やかな時間が流れていく。

莉杏は奏瑪の心臓の音を聞いていた。
最初は、早かった音が穏やかになっていく。
その音が、慎神の心臓の音に似ている気がした。

「慎神くん、今…どうしてるかな?」
「きっと……探し回ってるでしょうね…」

「あの、聞いてもいいですか?」
「はい」
「慎神くんが、奏瑪さんは“買った”って言ってました。それは、どうゆう意味なんですか?」

「僕の両親は、会社を経営してました。
それなりに、いい生活もしてて……
でも……よくある話なんですが、父親が友人の借金の保証人になったのが原因で……一気に地獄に落ちました。借金はみるみる増えて気づいた時には、何億ってなってて………
両親は自殺。
それを助けてくれたのが、慎神様です。
“借金を肩代わりしてあげる。奏瑪は、僕に買われたんだよ”って!」
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