旦那様は征服者~慎神編~
「それで、お世話を…?」
「はい。慎神様の為に色々、勉強しました。
料理、掃除、洗濯……経営のことも」

「だからかぁ。
奏瑪さん、家事完璧だから!
お料理も、とっても美味しいし!」
「そうですか?嬉しいな!」
「慎神くんの手前、言えなかったけど……
奏瑪さんの玉子焼、大好きです!」
満面の笑みで言った、莉杏。

「フフ…ありがとうございます!」
奏瑪も嬉しそうに微笑んだ。
そして話を続ける。
「僕も聞いていいですか?」
「はい」
「何故、莉杏様は慎神様を受け入れることができたんですか?」

「………寂しいのかなって…思って……」

「え?慎神様がですか?」
「はい」
「慎神くんの異常な感情は、寂しさからきてるんじゃないかなって!
慎神くん、安心が欲しいってよく言ってますよね?
それも、きっと寂しさからじゃないかな?
最初は、同情もあったと思います。
でもそれが、愛情に変わったんだと思うんです」

「慎神様のこと、よく見てるんですね!」
「それは、奏瑪さんもですよ?」
「え?」
「慎神くんが何を求めているのか、どうして欲しいのかちゃんと把握してお世話をしてた。
慎神くんが、頭を撫でるのはそれだけ信頼してるからなんだろうなぁって!」
「確かに慎神様は、信頼の証に男女関係なく頭を撫でるクセがありますね」

それからも一つの毛布に寄り添ってくるまり、二人は色んな話をした。
他愛もない話だが、莉杏と奏瑪は話が尽きなかった。

「ふわぁぁぁ……」
莉杏が大きな、あくびをする。
「フッ…!!大きなあくび(笑)」
「あ…////お恥ずかしい……////」
「寝ていいよ!大丈夫。僕は起きてるから…」
「それはダメです!一緒に寝ましょう!」
「フフ…うん」
莉杏は、奏瑪の肩に頭を預け目を瞑った。
すぐに、寝息が聞こえてくる。

奏瑪は微笑み、頭を撫でた。
頭を撫でていた手がそのまま、頬に移動する。
そしてゆっくり、口唇をなぞる。

その柔らかい感触に、身体が昂っていく。

「莉杏…好きだよ……」
奏瑪は、ゆっくり顔を近づけた。

口唇が重なった。

手でなぞった時とは違う、また何とも言えない感覚。
このまま、口唇を離したくない。
口唇を塞いだまま、息が止まっても構わない。

そう思える程の、高揚感と幸福感があった。

「んん…」
莉杏が苦しさでもがく。
その行為が拒否をされた気分になり、咄嗟にその場に莉杏を押し倒した。

「え━━━━奏瑪さ…」
「あ…ごめん……」
「奏瑪さん…泣かないで…?」
「え?泣いてな━━━━━」

奏瑪は泣いていた。
どうして泣いているのか、自分でもわからなかった。

莉杏は、奏瑪の目元をゆっくり拭う。

「寝ましょう?」
「そうだね……」
また莉杏は、眠りについた。

奏瑪は莉杏をゆっくり寝かせる。
組み敷いて、口唇を重ねた。

「莉杏……今だけは、俺だけのモノでいて……!」



夜が明けて、朝日が二人を照らす。
「おはよう…莉杏さん」
「奏瑪さん…おはようございます」
莉杏が目を覚ますと、奏瑪が優しく見つめていた。

「出発しよう!」
「はい」

車を走らせる。
更に二時間程走り、小さな小屋のような建物に着いた。
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