偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「すまなかった」
フッと、敬の表情が変わった。

「どう、したの?」

さっきまで怒っていたのに、まるで泣きそうな顔。

「子供のこと、言わせなかったのは俺の責任だな」
「違うっ」
「違わないよ」

ギュッと、敬が私を抱きしめた。

懐かしくて、温かくて、込み上げる感情。
この温もりを私はずっと求めていた。

「ごめんなさい、勝手なことをして。でも、どうしてもあなたのことが忘れられなかったの」
だから敬也が生まれてきてくれて本当にうれしかった。

「俺だって、真理愛のことを忘れたことはなかった」
「敬」

もう離さない。もう離れない。そんな思いを込めて敬の背中に手を回した。

しばらくして、敬の肩が小刻みに震え私の肩口に顔を埋めた。

「ずっと、ずっと、真理愛に会いたかった。真理愛がいなくて寂しかった」
普段聞くことのない鼻にかかった声。

私は初めて敬の弱音を聞いた。
これも敬なんだと思うと愛おしくて、回した腕に力を込めた。
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