独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 でもそれが本当の理由ではないことぐらい、結子にも理解できる。

 彼はきっと何かを隠している。それを暴かないことには、結婚の話は進められない。仮初めとはいえ戸籍上は夫婦になるのだから、彼の真意を知っておきたいと思っていたのに。

「だからどんなに遅くても今年中には入籍して一緒に住み始めたいんだ。結子がいいなら今夜からでもいいけど」
「!? な……に言って……? 今日はさすがに冗談だとしても……今年中って急すぎるでしょ!?」
「いや、俺ほんとに今夜からでもいいけど?」

 ……だめだ。このままだと奏一にいいように言いくるめられてしまう。頭のいい彼の言動に、思考が固くて柔軟性の足りない結子ではまったく太刀打ちできない。

 だからこの場では即答せずに、一旦持ち帰って検討するしかない。友人や職場の仲がいい人にも相談したいが、それよりまずは両親と話を合わせなければいけない。

「あの……少し両親と相談する時間だけ、ください」

 しどろもどろではあるが、奏一もこの言葉には頷いてくれた。とりあえずその場は言い逃れることが出来た。

 けれど実際に両親に相談したら『じゃあ月末にしたらどうだ?』なんて言われるとは思わなかった。

 ――月末って明後日なんですけど!

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