独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

「前より住みやすくなっただけで……」
「よかったね」

 結子は門限や通勤の煩わしさから解放され、以前より自由気ままな生活を送っている。そして結子がのびのびと生活していることは奏一にも伝わっているらしい。快適生活に臆する言葉を聞くと、彼はまた楽しそうにくすくすと笑う。

「唯一不満があるとすればベッドが一緒なことだけど」

 とはいえ全く不満がないわけではない。

 結婚して夫婦になると決まった時点である程度の覚悟は出来ていたものの、やはり結子と奏一の寝室は一つだった。

 広いマンションで部屋は余っているし、政略結婚だというのならばそこまでべたべたする必要もないはずだ。だが奏一は、どうしてもこれだけは譲れないらしい。

 私物を搬入するために案内された部屋には、何故かベッドが備え付けられていなかった。家具は一切用意しなくていいというから何も持って来なかったのに、これでは就寝のときに困ってしまう。

 だからインテリアショップからベッドを購入してもいいか訊ねたところ、あっさりダメだと却下された。

 床に布団で寝ろってこと? と不機嫌になったのは数時間だけ。結子はその夜に彼の寝室に引きずり込まれたことで、ようやく彼の言葉の意味を理解した。

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