独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる
「夫婦らしいことする気になった?」
「ならないわよ!」
最初の夜と同じ笑顔で距離を詰められたので、身構えた結子は奏一の顔をキッと睨みつけた。
「そんな気が立った猫みたいに怒らなくてもいいのに」
結子の威嚇に、奏一はまたいつもと同じように笑う。『結子がその気になるまでしないってば』といつもと同じ台詞を添えて。
「でも俺も、健全な大人の男だからね? 結婚した以上、結子以外の人は抱けないんだから。早くその気になってもらわなきゃ困るよ?」
「……」
奏一が仕事用の眼鏡を外してテーブルの上に置く。その動作を眺めながら、結子は彼が持ち帰ってきた仕事を終えた気配を察知して更に警戒態勢を強めた。
確かに入籍して夫婦という関係になったのならば、身体の関係を持ってもおかしくはない。そういう要求もあるだろうと覚悟してきたつもりだし、イリヤホテルグループの御曹司ならばいつかは周囲の人々に子を望まれるだろう。
けれど奏一は結子の意思を無視して手を出すようなことはしない。同じベッドで眠りたがるし、結子を誘う様子も全くないわけではないが、嫌がる素振りを見せるといつも『しないから大丈夫だよ』と言ってくれる。
だからまだその先には踏み出せていない。それどころか、その前の段階にさえ未だに到達したことがない。