極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 それを見た衛士はなにを思ったのか、私の肌への愛撫を再開する。ゆるゆると彼の手が滑り、だめと拒否したいのに、その声さえ茉奈を起こすものになってしまったらと思うと耐えるしかない。

「ん……んっ」

 口を塞いで物理的にキスができない状態にしているからか、衛士は私の肌に唇を寄せた。手と唇、時折舌を使って、懐柔されていく。

 必死に口に手を当て、声を出さないよう、漏らさないように努める。

 それなのに、衛士の手は触れ方を変えながら私の弱いところを確実に攻め立てていった。胸元に彼の手が伸びてやわやわと刺激されるたび、視界が涙で滲んでいく。

 この先の快楽を私はすでに彼に教え込まれているから、受け入れたい気持ちが理性を押し潰していく。

 でも、茉奈が起きるかもしれないし、ご両親が帰ってくる可能性だって……。

 ついに堪えきれなくなった涙が目尻から滑り落ちた。それに気づいた衛士が動きを止める。

 瞬きするたびに、溜まっていた涙がこぼれ、衛士はしばらく葛藤する素振りを見せた後、私の目元に口づけた。そして先に彼が体を起こす。

 おかげで私たちの間に微妙に距離が生まれ、はだけた箇所が空気に晒されて身震いする。そんな私を、衛士は慎重に抱き起こして優しく抱きしめた。

「悪い、調子に乗ったな。声を出さないように耐える未亜があまりにも可愛くて」

 まさかの言い訳に、私は眉をつり上げる。衛士を睨みつけた。
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