極秘出産でしたが、宿敵御曹司は愛したがりの溺甘旦那様でした
 見慣れない天井と怖い顔をした衛士が目に映った。なにか怒らせることをしただろうかと不安になったところで、顎に手を掛けられ衛士の親指が私の唇をなぞる。

「本当は今のでやめるつもりだったのを未亜が煽るから」

「あ、煽るって」

 とっさに言い返そうとしたがキスで口を塞がれ、再び甘い口づけが始まる。

「ふっ……ん……んん」

 さらに衛士の手は露わになっている私の肌に触れていき、違う意味でも声があがりそうだ。

「え、い……う、んっ……」

 拒みたいのに拒めない。大きな手のひらの感触を薄い皮膚越しに感じ、それはけっして嫌なものではなかった。むしろ私の中の熱を呼び起こす。

 どうしよう。このまま流されようか。きっとその方が楽だし、私だって彼を求めている。

 理性を手放しそうになった瞬間、かすかな声が聞こえた。私のものでなければ目の前の衛士のものでもない。

 衛士も聞こえたらしくキスも私に触れるのも中断し、意識を部屋の別のところに向けている。彼の視線の先にはベッドがあり、おそらく声を発したのは茉奈だった。

 起きてしまったのか、夢を見ているのか。息を押し殺し様子をうかがっていたら、突然首筋にキスを落とされる。

「やっ」

 反射的に叫ぶと、衛士が素早く人さし指を私の唇に当てた。

「静かに。茉奈が起きる」

 そう告げる衛士の顔はどこか楽しそうで、逆に私はとっさに両手で自分の口を押さえていた。
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