嘘と、恋。
私と、あなた。
「じゃあ、始めようかな」


目の前の、人懐っこそうな笑みを浮かべた男性は、テーブルを挟んで前に座っている私の方へと身を乗り出した。


「はい…」


どこか、私の声は緊張していて。


今現在、狭い個室で仕事の面接中。


仕事と言っても、バイトになるのかな?


時給なので。


その時給は6千円。


「うち、キャバクラって言っても、
セクキャバだけど、大丈夫?」


「はい…」


きっと、多少触られたり、下着のような姿で…とかだろうけど。


「あ、自己紹介まだだったね?
この店のオーナーの高崎康生です」


たかさきこうせい…。


その名を、頭の中で反芻する。


オーナー?それは、また店長とは違うのかな?


「普段、面接に限らずこの店の事は、店長の本田に任せてるんだけどね。
なんか、この時期にインフルエンザ掛かって3日前から休ませてて。
で、オーナーの俺が、今日は」


やはり、オーナーと店長は違うものなんだな。


そして、オーナーの方が偉いっぽいな。


「とりあえず、写真付きの身分証出して」


「えっ?身分証…忘れました」


「え?
さっき、電話でも俺、言ったでしょ?
持ってるって」


あれ…話が違う…。


「―――身分証、無くても大丈夫だって言われました」


「言われた、って誰に?」


「ビックリするくらい綺麗な顔したホストの人に」


今から三十分程前に会った、綺麗な顔をしたホストの男性。


「ホスト…。
えっと、どういう事?」




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