嘘と、恋。
つい、三十分程前。


私は、S町で有名な歓楽街のど真ん中で、
立っていた。


この場所に来た目的は、働く場所を求めて。


この町は、今のように昼でもガヤガヤとしていて吹く風がほんの少しお酒臭い。


辺りを見ると、キャバクラやホストクラブ等の飲み屋が多いけど、
風俗のお店も多い。


私の目的は、その風俗の方。


ここに来たけども、一体どうしようか、と立ち竦んでいると。


こちらへと真っ直ぐと歩いて来るスーツ姿の男性が居て。


そのモデルのようなスタイルの良さにも目を奪われるけど。


何よりも、その顔。


まるで芸能人みたいに整った顔をしていて。


いや、アイドルや俳優でもこんなにカッコいい人居るだろうか?


私がマジマジと見過ぎたからか、その超イケメンは私の前で立ち止まった。


至近距離で、目が合う。


多分、この人、ホストってやつなのかも?


スーツ着てるけど、こんな明るい髪の色で、会社とか行けないだろう。


それに何よりも、この場所に居て、
この場所の雰囲気に馴染んでいる。


「学校は?」


そのイケメンホストの私に向けられた第一声は、それで。


私服だけど、やはり私は見るからに学生なのかな?


「あ、今は春休みか」


答えない私に、答えを見付けてそう納得している。


「あ、あの…ホストのお兄さん。
この辺りの風俗で、年齢誤魔化して働けそうなお店、ありません?」


きっと、そういったお店は、最低でも18歳以上で高校生は不可ではないだろうか。


「お金欲しいの?」


彼のその質問に、初めて私は答えた。


「そうなんです」


お金が、欲しい。


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