それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

決意

1週間後。

高校生活最後の体育祭―きっと自分が“生徒”として参加するのは最後の体育祭―で最後の競技を終えた私は、一緒に出場していたクラスメイトや美羽と一緒に、指定の応援席へ戻った。

「これで、体育祭も終わりか~」

「実感ないよね。あっという間に終わっちゃった」

少し感慨深げにつぶやいた私の言葉を、美羽が拾ってくれた。

「けどさ! 沙帆はまだ、出番が残っているようなものだよね?」
「児玉、クラス対抗リレーでアンカーなんでしょ?」と美羽は私の腕をつついた。

「あ、そうそう。体育で100mを計った時、クラスで一番だったんだって」


「アンカーに選ばれた……」

クラス対抗リレーに出場すると決まった時、戸惑い半分、嬉しさ半分といった様子で報告をしてくれた彼を思い出す。

「楽しみだね?」

美羽の問いかけに、素直に「うん」と頷く。

ここ数日、放課後遅くまで残って練習していたみたいだから、どうか彼の努力が報われるといいな。
――クラスが違うから、あんまり公に応援の気持ちは出せないけれど。

「それにしても、児玉、足速いんだね。あいつ、本当に勉強も運動も出来るんだね。ここまですごいと尊敬だわ」

「おーい、吉川~!」

美羽の言葉に被せるように、いつもと違ってジャージを着た先生が、少し離れた場所から私を呼んだ。

「コーン運ぶから手伝え!」

「いってらっしゃい」

私がうなずくより前に、美羽は私の背中を叩いた。

「いつになったら雑用係卒業できるんだろ」

もう慣れちゃったけど、と付け加えた言葉に、美羽はケラケラ笑った。

「そうだね、もうさすがに慣れちゃうよね。半年間、雑用係引き受けちゃっているもんねえ」

「そっか、もう半年も、先生に服従しているんだ」

「服従って、言い方」

ほら、早く行っておいで、と、美羽は笑いながら、立ち上がった私の背中を押した。
< 89 / 125 >

この作品をシェア

pagetop