甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「簡潔にまとめたものだけど大体の内容はわかった?」


うなずくと、塔子は口角を上げる。


「沙也に手伝ってもらいたいのは、響谷ホールディングスが都内にオープン予定の、家族層をターゲットにしたカフェレストランで開催される親子料理教室よ」


「親子でってところが素敵ね」


「でしょう? 先方にもこの企画は好評で、料理教室の材料諸々をうちが納品する話をもちかけていたのよ」


「それが内緒って言ってた話?」


塔子が首を縦に振る。


「発案者の佐多が中心になって動いてたの」


「すごいね、佐多くん」


「いや、姪がママと料理教室に通いたいって最近よく話してたのを思い出しただけだ」


「日常生活からヒントを得るのが、佐多はうまいのよね」


親友の賛辞に同意する。


「お洒落で開放的なカフェレストランって敷居が高そうなイメージがあるけど、料理教室で通っていたら親近感がわくよね」


「そうでしょ。そこで沙也の出番なのよ」


今までの話の流れで、私が手伝えそうな部分は見当たらず、首を傾げる。


「沙也、料理苦手でしょ? この教室、料理初心者の人をメインターゲットにしてるの。初めて料理に取り組む親子、初めて包丁を握る子供という風にね。そこから段階を上げて長く通ってもらうのが狙い」


「ちょっと、私、一応料理経験はあるんだけど?」


「でも週末以外ほとんど自炊しないでしょ。調理に時間がかかるからって」


さすが親友、私の苦手分野を熟知している。

料理は嫌いではないが段取りが悪く、レシピを読み取る力も弱い。

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