ゆるふわな君の好きなひと
「わたし、もう帰るよ。由利くんは今からでも眞部くんに連絡すれば? まだマックにいるんじゃない?」
机の上に出していた筆箱の中にシャーペンや消しゴムを投げ入れる。そんなわたしの行動を、由利くんが不思議そうに見つめてまばたきした。
由利くんは、何も考えずに「教え方が悪い」とか「晴太だったら」と言ったのだ。その能天気さと無神経さが腹立たしい。
天然で上手に人に甘えてくるくせに、結局わたしは彼の笑顔に騙されて利用されてるだけなんだ。
不貞腐れて立ちあがると、由利くんがわたしの手首をつかんで引き留めてきた。
表情や態度で、わたしが怒っていることはわかるはずなのに。由利くんは特に焦っている様子もない。
どうせ由利くんは、自分の行動で相手がどう思うかなんて気にならないんだ。
「帰らないでよ。おれ、青葉がいい」
大きな瞳で懇願するようにジッと見上げられて、どうすればいいのかわからなくなる。
「教え方悪いなんて、嘘だってば。青葉の顔ばっか見て、聞き逃しちゃっただけ」
困って眉尻を下げると、由利くんが「ほら、座って」と言いながらわたしの手首をクイッと引っ張った。