敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
その一週間後、父は逝った。

フライトのたびにそれを思い出すほどファザコンではないが、コックピットから見える絶景に、穏やかで優しかった父の顔がよぎることがある。

パイロットになったきっかけは父だが、もちろんこの仕事にやりがいも感じていた。

フライトは毎回緊張感と達成感の繰り返しで、ストレスを伴う。

それでも辞めたいと思ったことは一度もない。

母親が社長と再婚したせいで、おもしろおかしく噂されているのも知っているが、そんなのはどうだってよかった。

俺自身がブレなければいい。

だが、ちえりが飛行機恐怖症なのは想定外だった。

それでも今さら手放す気などない。

俺は航空機事故で死ぬつもりはないから、離婚する理由がないだろ?

なんて、ただの屁理屈だろうか。

明日のことなど誰もわからないのに、そんな言い分を通そうとする自分に驚いた。

今まで誰にも心を動かされなかったのに、ちえりには不思議なくらい揺さぶられまくっている。

なんだかんだ、ちえりに執着しているのは俺のほうなのかもしれない。



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