敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
愛の深さに月日の長さは関係ないという奴もいる。でも俺にとってはそうじゃない。生涯愛を貫けるというのが、なによりも重要だから。

母親が男をとっかえひっかえし始めたのは、俺が小学二年生のときに父親が病気で亡くなってからだった。

『新しいパパが必要でしょう? 全部大地のためよ』などと口にし、喪が明ける前にひとり目の再婚相手を連れてきた。全国に十店舗ほど、評判のよいレストランを展開しているやり手の社長だった。

俺の実の父親は、パイロットになりたかったらしい。だが祖父が経営していた小さな町工場を継ぐために夢を諦めたそうだ。

それでも飛行機が好きだった父は、幼い俺を連れてよく空の旅に出かけたり、空港に遊びに連れってくれた。

最新鋭機が就航すると、展望デッキでエンジン音の違いなどを楽しみ、美しい機体を心ゆくまで眺めた。親子で過ごすその時間が好きだった。

そして父が病魔に侵され、死期が迫っているのを察した俺は、『将来パイロットになる』と約束したのだ。

父は痩せ細った顔いっぱいにうれしそうな笑みを浮かべ、『大地がパイロットになって飛んできてくれたら、父さんはお空に引っ越ししても寂しくないな』と俺の頭を撫でた。

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