協道結婚
【3】協道結婚
月曜の朝 7:30
都内へ向かう電車。

「静華さん、次はあそこからお願いします」

「了解!」

誠からスマホを受け取る静華。

混み合った車内を、スルリとほぼ対角の位置へ移動する。

誠が右手て、OK👌サインを送る。

駅に着くと、沢山の人が降りて行く。

事前に開くドアに近づいている常習者。
カバンを引っ掛けながらのおじさん。
リュックを周りにぶつけながらの若者。
迷惑に一瞥する目など気にもしてないだろう。

(はぁ〜。そんなもんよね〜)

まだ混んでいる中、次の乗客が押し寄せる。

隙間を縫って、すぐに奥へと乗り込む常習者。
ドアの近くで流れを遮り陣取るおじさん。
ぶつかりながらもスマホに夢中の若者。
それぞれが我れありきで他人には無関心。

(ハァ〜ァ。東京かぁ…)

この光景を撮り終え、誠の方へ戻る静華。

「はい。次は隣の車両ね、ついて来て!」

誠を背後に気にしながら、誰にもぶつかることなく進む静華。

路線切り替え地点で電車か揺れる。

瞬時に誠の手を握って引き寄せる。
そのままであれば、座っている老人に倒れ込んでいたであろう。

手を離し、またすぐに進みだす静華。

「到着!さぁて、駅近いよ、どこにする?」

いつもながら、静華の動きに感心中の誠。

「あ、え〜と、あの辺にしましょうか」

「りょ!」

スルリと人混みを抜けて行く静華。



<数日前>

テラで初デート?
(静華の日記より抜粋💦)

の後も、数回夕食をしながら、会っていた。

専ら互いの仕事の話ではあったが…
静華の日記には💖マークが増えていく。

ただ…本当はもっと別の話もしたかった。

(あの大企業の御曹司様と、私なんて…所詮は叶わぬ夢よね…🥲)

少しは、いや…もう少しは…いや結構…いや意外と…も、もしかしたら!
と、ついつい期待してしまう自分もいた。


そんなある日。

「結婚しましょうか」
真顔で突然の「お言葉」。

「えっ?」

百万本のハイビスカス🌺が咲いた。
頭ん中はすでに真っ白。
魂が…優待離脱しちゃぅ〜

「あっ、いや、そうじゃなくて💦」

気を失いそうな私に慌てる彼。

(もしかしたら?と夢見てたけど…まさかこんな突然に来るなんて…💖)

「静華さぁ〜ん、聞こえてますか〜?」

(誰かが呼んでるわ…)

「ち、違うってば、違うの!」

(き、聞こえるわ…ちがうんだわ〜)

「こんなになるなんて…」
初めての反応に戸惑う誠。

普通ここまで飛び立つ女子はいない。

(違うんだぁ〜ふぅ〜ん、そっか〜)

「ん?…えっ?!」
一瞬でハイビスカス🌺が散った。

「良かった!分かりますか、静華さん?違うんだって!」

「えっ?…ちが…違うの?」

富士山でも噴火する気配がした。
(ゴクリ)

「違うって!!ってってって!…(間)ど、どう違うのよおーーーーっ❗️」

気配を裏切らない、大噴火であった🌋。

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