協道結婚
赤坂の清楚なレストラン。

ソムリエが、含んだワインを吐くゴジラと化し、厨房では勢い余ったステーキが吹き抜けの天窓に張り付く。

「ま、まぁ、落ち着いて、ねっ、静華さん」

「結婚っつっただろう⤴️えぇ⤴️お前さん!」

書くのも難しい言葉遣いである。

そこへ、隣りの席から来た男の子。

「おめでとう、お姉ちゃん!」

(こ、これが神!神の一声!)
御曹司でも、バラエティー番組は見る。

さすがの静華も、静かな世界遺産に戻った。

「冗談でも、言っていいものと、魂がぬけちゃうかも知れないものがあるねよ、誠さん!」

魂はそう簡単には抜けない。

「せ…説明してもいいかな?」

恐る恐る伺う誠。

「聞いてあげようじゃない」

「考えたのですが、静華さんは電車に乗り慣れてて、私は慣れてない。」

「ふむ」
オヤジか!

「で、静華さんは商談が苦手で、私は慣れています」

「ん〜ん!?…ふむふむ」
オヤジ確定。

「それから、二人共、お客様の身になって、安心して家を紹介したいと思ってる」

(確かに…そう)

「家庭のことを知るには、その家に住んでみないと分からないと思うんです」

段々と正気を取り戻してきた静華。

「ここは、二人で力を合わせませんか?」

(悪い話しではなさそうじゃ)
…あ、いや💦(…なさそうね)

「だから、お互いに売る家やマンションに住んで見て、実体験を踏まえて、お客様にお勧めしたいと思うんです」

業界初の試みに自信満々の誠。

やっぱり…カッコ良かった(恥;)。

「で、もしかしてそのために結婚❣️❓」

「そう!」 思わず手を握る誠様。

「そう❣️って言われても…そんな急には」
ビックリマークのハートには気づいていた。

「ま、まずは、ご両親に挨拶とか、結納の儀(皇族か!)とか、衣装合わせとか…引き出物は何にしようとか…、あっ、私クリスチャンじゃないけど、教会は好きよ!でも、花嫁の父と腕組んで歩くの…は(想像中)ムリムリ!ありえないし! …あら?、誠さ〜ん!」

私にもできた!優待離脱?
んな場合じゃない。

「あのね、そう言うのは、必要ないんです。」

「でも、結婚でしょ?…あぁ、最近流行りの披露宴ナシ、身内だけ、カタチだけってやつかな。でも、御曹司となると…やっぱり盛大にやるんでしょ?著名人も沢山来て、あっ、またラブさんも来るよね。どうしようかな〜ブーケ💐受けとってほしいなぁ…」

「ストップ!ちょっと一時停止⏸」

今度は離脱前に留まらせた。

「結婚と言っても、形だけでいんですよ」

「偽装結婚?誠さん、ストーカーとかに?あっ、親の縁談が気に入らないとか?権力には屈したくはないわね、確かに」

唖然。
このペースでは3章が終わらない。

「偽装結婚…とは違って、そうだね…言うなれば、協道結婚!ってとこかな」

我ながら良い出来だと思った。

「きょ、共同結婚?契約結婚ってのは見てたけど…」

ドラマの末の現実を思い出し中…
(ムフっ!)

「何ニヤついてるんですか静華さん?ちなみに、「共同」じゃなくて、同じ仕事の為に協力する、協道結婚です」


そんなこんなで、通勤調査から協道活動が始まったのである。

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