sweets 〜 焼き菓子が結ぶ恋物語 〜

6.再会

あぁ、破壊力抜群・・・。


「そんなに俺の顔を見るな。あー、もう、言わな」


私は上半身を持ち上げて、急いで友哉さんの唇をふさいだ。
『言わなきゃよかった』って、言わせないために。


「次は・・・二葉にキスしてもらいたくなった時に言うから」


友哉さん、可愛い♡


私たちはウィークエンドシトロンの材料を揃えて・・・。
今までの話の流れからいくと、父が東京に出す予定の店に向かった。


「昨日はそんなことも知らずに、ここにいたのよね。ほんとビックリ」


父よりも先に、父のお店を使わせてもらうことになるなんてね。


「もしかしたら・・・ここは二葉の店になるかもしれないな」

「え? 私?」

「だって考えてもみろよ。可愛い娘がパティシエールになってるなんて知ったら・・・」

「うーーーん、どうなんだろ。嬉しいものなのかな?」

「ま、それは明日、直接社長に聞いてみるか」


友哉さんと話をしながらも、私は父のノートを見ながら、書かれているレシピに忠実に作った。


「そろそろいいかな。友哉さん、オーブンに鉄板入れてほしい」

「オーケー!」


生地を流し入れた型を鉄板に乗せ、オーブンに入れてもらう。
バタン、と扉が閉まる音を聞いて、私はつぶやいた。

『美味しく焼けますように・・・』

シトロンに乗せるアイシングを作っていた友哉さんが、手を止めた。


「それ、可愛いな。やっぱり」

「え?」

「2年前も何度か見てそう思ってたけど、あの時は少し離れてたところから見てたからな・・・母さんには、恋に落ちる呪文だって言われたよ」

「やだ・・・所長さんたら・・・」

「アハハハ」


友哉さんが、ふっ、と真面目な表情になった。


「俺、二葉と店やりたいな。こんなふうに、ずっとふたりで・・・誰かのために、洋菓子を作っていたい」


友哉さん、それって・・・。
ずっとふたりで・・・って。

勝手に、期待しちゃうよ?


「二葉に、今回シトロンを3本作ってもらっただろ? 1本はもちろん社長に。もう1本は俺がもらってもいい? それで・・・最後の1本なんだけどさ」

「うん」

「それ持って、一緒に俺の親父に会いに行かないか?」

「・・・え?」


それは、つまり・・・。


「明日、社長とお母さんに、二葉を俺に任せてほしいって言う」

それを聞いて、もう涙がじわっと浮き上がる。


「その後、親父に二葉を紹介する」


兄貴も呼んでおいた方がいいかな・・・とつぶやく友哉さんに、後ろから抱きついた。


「二葉?」

「友哉さん・・・」


いつも泣いてばかりだから、泣き顔を見せないように後ろから抱きついたのに・・・。


「また泣いてるだろ?」


友哉さんの声がした。


「このシチュエーション、絶対泣くでしょ」


私は抱きついたまま言った。


「俺さ、大事なこと言い忘れてた」

「大事なこと?」

「そう」


そう言って、友哉さんは振り返った。


「二葉」

「はい」

「俺と、死ぬまで一緒にいてほしい」


ああ・・・。


「二葉、返事は?」

「え?」

「俺、待てない・・・せっかちなの分かってるだろ? 今すぐ、返事してほしい」


そう言って、友哉さんがうつむいた。


「ほんと、友哉さんらしい」

「え?」

「プロポーズなら、指輪が出てくる場面じゃないかな?」

「あ・・・」


シマッタ!という顔の友哉さんが、とても愛しく思える。


「私も、ずっと友哉さんと一緒がいい」


そう答えた。
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