やわく、制服で隠して。
腕を引いたまま、私の体を自分のほうに引き寄せて、もう片方の手で、深春は器用に鍵を閉めた。

閉まったドアに押し付けるようにして、深春は自分ごと私を閉じ込めた。

深いキス。
私をドアに押し付けたまま、深春は何度も何度もキスをした。

「まふゆ。まふゆ、会いたかった。」

たった数日。それだけの会えなかった期間すら、私と同じように深春も想っていてくれたことが嬉しかった。

「私、自分がやったこと間違ったなんて思ってない。」

深春は懇願するみたいな目で私を見た。
正しさの同意を求めるように、私の頬に触れてキスを繰り返した。

「先生にはごめんなさいって言ったのに?」

離された深春のくちびるをなぞって、ロングヘアをスルッと撫でる。
深春は甘い。香りも、泣き出しそうな瞳も。

「意地悪言わないでよ。」

「ごめん。でも先生の気持ちには応えたいな。」

「私より?」

「そうじゃないよ。」

一回、二回。
深春は私のくちびるに軽くキスをして、それから足りない分を埋めるように深くキスをした。

「何が違うの?」

「先生の言ってることは正しい。私達は嘘をついたし先生を困らせた。多分…親のことも。でも。」

「でも?」

「私は深春と二人きりで過ごせて幸せだった。たったの半日だったけど。ずっと二人だけで居たかったよ。」

「まふゆ。」

深春が強く、ドアに押し付けてくる。
ガタガタッとドアが鳴る。

昼休みが終わる間近だったから誰も居なくて良かった。
予鈴が鳴っても私達は求め合った。

ここから出たらまた人目を気にして、何故かは分からない罪悪感を抱いて、私達は“親友のフリ”をする。

先生は私達の繋いだ手に、見ていないフリをした。
女子同士の触れ合いならよくあること。
それで済まされてしまうことも悔しくて、だけど本当のことを知られるのはもっと怖い。

こんなに大切な人を、大好きな人を、その感情を殺していくことに、私はあとどれくらい我慢出来るのかな。

何を失くしても、何と引き換えにしても守りたいのは深春だけなのに。
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