この政略結婚に、甘い蜜を
1、誕生日プレゼント
日本の東京。首都と呼ばれ、煌びやかなネオンに照らされた高層ビルが立ち並び、華やかな街として多くの人に認識されているが、都心を離れれば同じ東京でも景色は全く変わってくる。

年季の入ったアパートで、艶やかな黒髪を可愛く結い、手作りの熊のぬいぐるみを抱いた幼い少女が眠る前、母親に絵本を読んでもらっている。読んでもらっているのは白雪姫である。

「ーーーそして、王子様のキスでお姫様は目を覚まし、二人は結婚して、幸せに暮らしましたとさ。おしまい」

絵本の中には、美しいドレスを着たお姫様とかっこいい王子様が幸せそうに微笑んでいる絵が描かれている。それを見て、まだ幼い少女は「わあ……!」と目を輝かせていた。

「お母さん、お姫様って素敵だね。私もお姫様になりたい!綺麗なドレスを着て、お城に住んで、王子様と結婚するの!」

子どもがよく言うであろう台詞に、母はニコニコと笑い、少女の頬を優しく包む。

「ええ。きっと素敵なお姫様に華恋はなれるわ。だから、このお姫様みたいに優しい心を持っていてね」
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