あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

「桜、悪いが、先程の部屋で待っていてくれ。俺はハリー達と少し話があるから、先に部屋でゆっくりしていろ。」


神宮寺はそれだけ私に伝えると、すぐに歩き出してしまった。

私は先に家に帰っていると、神宮寺に言うタイミングを逃してしまい、仕方なく、先程の着替えをした部屋へと向かった。

神宮寺から渡されたキーで部屋のドアを開けて中に入ると、既にヒロとマヤの姿は無かった。
部屋は空調の音が響くほど、静まり返っている。

そして、私は部屋の奥へと進み、立ち止まった。
予想外のことに驚いたのだ。

それは、テーブルの上に、美味しそうな食事が用意されている。


テーブルには、フルーツの盛り合わせや、サンドイッチなどが並べられている。
メロンの器に、小さなボール型に切り抜かれた、色とりどりのフルーツ。
そしてボリュームのありそうなベーコンや卵、トマトが挟まっている、BLTサンドが用意されていた。

恐らく、神宮寺がホテルに頼んでくれていたのだろう。
確かに、お店では殆ど何も口にしていなかったので、ちょうどお腹が空いたところだった。
神宮寺の気づかいに感謝だ。

私は椅子に座り、サンドイッチをパクリと一口食べて、何気なく部屋を見渡した。

すると、奥の部屋に大きなキングサイズのベッドが目に入った。
考えてみれば、此処はホテルのスイートルームだ。


今日はここに泊るのだろうか?

もし、泊まるのならば、神宮寺と同じベッドに寝るのだろうか。

(…まさか、今日…何もないよね…)

私は、一人で妄想していたことに恥ずかしくなり、顔をブンブンと大きく左右に振った。
全く私は、何を考えているのだろう。
いくら、誤解だったとしても、つい最近まで殺したいほどに憎んでいた男だ。


お腹もいっぱいになった私は、ソファーにもたれかかるように座った。
今日は初めてのことばかりで、凄く疲れた。
フカフカのソファーがとても心地よい。

なんだかとても気持ちよくなり、気が付けば眠ってしまったようだ。


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